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あなたの血管は大丈夫?糖尿病と切っても切れない【脂質異常症】の真実と対策!

こんにちは!上田診療所 院長の上田です。

健康診断で「コレステロール値が高い」「中性脂肪が多い」なんて言われて、ドキッとされたことはありませんか?実は、この「脂質異常症」は、糖尿病をお持ちの方にとって、とても注意が必要な病気なんです。

「でも、脂質って何だか難しそう…」「糖尿病だけでも大変なのに、また別の病気!?」そう思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。でもご安心ください!今回は、皆さんの血管をボロボロにしてしまう「脂質異常症」の正体と、糖尿病との深い関係、そして今日からできる対策について、分かりやすく、楽しくお話ししていきます!



私たちの体にとって必要な「油」の仲間、それがコレステロールと中性脂肪です。でも、水に溶けない油は、そのままでは血液の中を自由に動き回れません。そこで登場するのが、まるで宅配便のトラックのような働きをする「リポタンパク」という運び屋さんです。

このリポタンパクには、いくつかの種類があります。特に大切なのが次の2つ!

●LDLコレステロール(悪玉コレステロール)

肝臓で作られたコレステロールを、全身の細胞に届ける役割をしています。

しかし、このLDLコレステロールが多すぎると、血管の壁の中に潜り込んでたまってしまいます。これがまるで「悪者」のように動脈硬化を進めてしまうため、「悪玉コレステロール」と呼ばれているのです。

こちらは、全身から余分なコレステロールを回収し、肝臓に戻してくれるお掃除役です。

血管の壁にたまったコレステロールも、積極的に回収してくれるので、「善玉コレステロール」と呼ばれています。HDLコレステロールが少ないと、血管のお掃除が滞ってしまい、動脈硬化が進みやすくなります。

そして、もう一つ大切なのが中性脂肪です。これは、主に体を動かすエネルギー源となる脂質です。食事から摂った余分な糖質や脂質は、肝臓で中性脂肪に変わり、VLDLというリポタンパクに乗って全身に運ばれ、エネルギーとして使われたり、体に蓄えられたりします。

特に、糖尿病をお持ちの方に注意してほしいのが、この中性脂肪を運ぶリポタンパクの残りカスである「レムナント」や、LDLコレステロールの中でも特に血管に入り込みやすい「小型LDL」が増えやすい傾向があることです。これらが動脈硬化をさらに加速させてしまうため、見過ごすことはできません。


リポタンパクの構造と種類、その機能:

構造:
リポタンパクは、脂質である中性脂肪やコレステロールエステルを内部に抱え込み、その周囲をアポタンパク、遊離コレステロール、リン脂質が取り囲む構造をしています。

カイロミクロン:
主に食事から摂取した中性脂肪を小腸からリンパ管を経て血液中に運び、脂肪組織や筋肉などに供給します。中性脂肪を届けた後は、カイロミクロンレムナントとなります。

VLDL(超低密度リポタンパク):
肝臓で合成された中性脂肪を、脂肪組織や筋肉などに運搬します。中性脂肪を放出した後、**VLDLレムナント(IDL:中間比重リポタンパク)**へと変化します。

IDL(中間比重リポタンパク):
VLDLが代謝される過程で生じる中間的なリポタンパクです。

LDL(低密度リポタンパク):
VLDLやIDLから中性脂肪が取り除かれて作られます。肝臓から末梢組織へコレステロールを運ぶ主要なリポタンパクであり、細胞表面のLDL受容体によって取り込まれます。一般的に「悪玉コレステロール」と呼ばれ、過剰になると血管壁にコレステロールが蓄積し、動脈硬化を進行させる原因となります。

小型LDL(small dense LDL):
LDLの中でも特に粒子が小さく、密度が高いものを指します。小型LDLは、通常のLDLよりもさらに血管壁へ入り込みやすく、酸化されやすいため、動脈硬化を強く促進する危険性があります。通常のLDLコレステロール値が正常範囲内でも、小型LDLが多い場合は注意が必要です。

HDL(高密度リポタンパク):
肝臓や小腸で合成されます。末梢組織から余分なコレステロールを回収し、肝臓へ戻す「逆コレステロール輸送」という重要な役割を担います。血管壁にたまったコレステロールを取り除く働きがあるため、一般的に「善玉コレステロール」と呼ばれます。HDLコレステロール値が高いほど、動脈硬化の予防に役立つとされています。

脂質異常症との関連:
血液中のリポタンパクのバランスが崩れると「脂質異常症」と診断されます。具体的には、中性脂肪が高い、LDLコレステロールが高い、HDLコレステロールが低い、または小型LDLが多い状態を指します。特に、糖尿病の患者さんでは、インスリン抵抗性の影響で中性脂肪が高く、HDLが低くなる脂質異常症を伴いやすいとされています。これらの異常は、動脈硬化を進行させる大きなリスク要因となります。

LDLコレステロールの管理目標値は、冠動脈疾患やアテローム血栓症性の病歴の有無によって異なり、場合によっては70mg/dL未満を目指すこともあります。脂質異常症の改善には、食事療法や運動療法などの生活習慣の改善が非常に重要であり、必要に応じて薬物療法も用いられます。



脂質異常症とは、簡単に言うと「LDLコレステロールが高い」「HDLコレステロールが低い」「中性脂肪が高い」状態のことです。これらの脂質がバランスを崩すと、何が起こるのでしょうか?

それは、皆さんの**「血管がボロボロになる」**ことです。

過剰なLDLコレステロールなどが血管の壁にどんどんたまっていくと、血管は硬く、狭くなっていきます。これが**「動脈硬化」**です。例えるなら、水の通り道であるホースの内側にサビがこびりついて、流れが悪くなるような状態です。

動脈硬化が進むと、次のような恐ろしい病気につながります。

●心筋梗塞・狭心症:

心臓に栄養を送る血管(冠動脈)が詰まったり狭くなったりする。

●脳梗塞:

脳の血管が詰まる。

●閉塞性動脈硬化症:

足の血管が詰まり、壊死してしまうこともある。

特に糖尿病をお持ちの方は、脂質異常症を合併しやすいことが分かっています。インスリンの働きが悪くなる(インスリン抵抗性)と、中性脂肪が増えてHDLが減りやすくなります。また、血管を傷つけやすい「小型LDL」が増えやすいことも特徴です。糖尿病と脂質異常症のダブルパンチで、血管へのダメージは計り知れません。だからこそ、糖尿病の治療と並行して脂質異常症の対策も非常に重要なのです!



「じゃあ、どうしたらいいの?」ご安心ください!脂質異常症の対策は、日々の生活習慣の見直しから始められます。特に大切なのが「食事」と「運動」です。

食生活の基本は、バランスの取れた「一汁三菜」の和食スタイルを意識することです。

魚: 特に青魚(イワシ、サバなど)には、血液をサラサラにするDHAやEPAが豊富です。

野菜・きのこ・海藻: 食物繊維が豊富で、コレステロールの吸収を抑え、排出を促します。毎食たっぷり摂りましょう。

豆類(大豆製品): 豆腐や納豆、味噌など。良質なタンパク質やイソフラボンを含みます。

加工食品・菓子・砂糖入り飲料: 糖質や脂質が多く、中性脂肪を増やしやすいです。

動物性脂肪: 肉の脂身やバターなど。LDLコレステロールを増やしやすいです。

トランス脂肪酸: マーガリンやショートニングなどに含まれる。動脈硬化を促進します。

よく噛んでゆっくり食べる: 満腹感が得られやすくなり、食べすぎを防ぎます。

規則正しい時間に食べる: 不規則な食事は、脂質代謝を乱す原因になります。

寝る前の食事は控える: 夜遅い時間の食事は、中性脂肪が増えやすいです。

運動は、脂質代謝を改善し、血管を丈夫にするために非常に効果的です。

•有酸素運動: ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳など、軽く息が弾む程度の運動を習慣にしましょう。

目標: 1回30分以上、週に3~5日、合計150分以上を目指しましょう。

•筋力トレーニング: スクワットや軽いダンベル体操など、筋肉を使う運動もおすすめです。

目標: 週に2~3日取り入れると良いでしょう。

•座る時間を減らす: 日常生活で体を動かす機会を増やすことも大切です。エレベーターではなく階段を使う、一駅分歩くなど、少しの工夫でも効果があります。



「お酒は好きだけど…」という方もいらっしゃるかもしれません。適度な量であれば問題ありませんが、飲みすぎは中性脂肪を増やす原因になります。

•目安量: 1日あたりのアルコール量は、男性で25g、女性で15gまでとされています。これは、ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯程度です。

•注意点: 中性脂肪が特に高い方は、アルコールを控えることが推奨されています5。お酒自体に高カロリーなものも多いので、注意が必要です。

食事や運動を頑張ってもなかなか脂質の値が改善しない場合や、すでに動脈硬化が進んでいる場合は、お薬での治療も検討する必要があります。

当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、適切なLDLコレステロールの目標値を設定し、治療方針を立てていきます4。

•一般的な目標値: LDLコレステロールは120mg/dL未満。

•動脈硬化性疾患がある方: 100mg/dL未満。

•心筋梗塞などを経験された方、リスクが高い方: 70mg/dL未満。

お薬による治療(スタチン、フィブラートなど)は、生活習慣の改善と並行して行うことで、より高い効果が期待できます。決して自己判断せず、必ず専門医にご相談ください。



脂質異常症は、糖尿病と同じく「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状がないまま血管を傷つけ、心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な病気を引き起こす可能性があります。しかし、早期に発見し、適切な対策を行えば、そのリスクを大きく減らすことができます。

当院では、皆さんの健康な血管を守るために、親身にサポートさせていただきます。健康診断の結果が気になった方、糖尿病と脂質異常症についてもっと詳しく知りたい方、ぜひお気軽にご相談ください。一緒に、元気な血管で毎日を笑顔で過ごせるよう、頑張りましょう!

上田診療所  院長 上田晃

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