認知症予防は 悪玉コレステロール低下が未来を決める ‼
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認知症予防に「パラダイムシフト」!悪玉コレステロール対策が未来を決める
皆さん、こんにちは!上田診療院長の上田です。
当院は、「検査も薬も最小限に」というポリシーを掲げ、患者さんの健康と生活の質(QOL)を第一に考えた診療を心がけてきました。
しかし、2024年夏、世界の医学界の常識を覆すほどの重要な研究が発表され、診療方針を根本から見直す「パラダイムシフト」が起こりました。

今日は、この最新の知見に基づき、皆さんの未来の健康に直結する認知症の予防について、詳しくお話しさせていただきます。
【衝撃の事実】中年期の「高LDLコレステロール血症」が認知症リスク第1位に!
2024年7月31日、世界で最も権威ある医学誌の一つである『Lancet』に、「Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission」という論文が公表されました。
これは、私たちが自力で変えられる、認知症の後天的リスク要因を網羅的に分析した最新の報告書です。
これまでの解析(2017年、2020年版)では、中年期(45~65歳)の「難聴」が長らく後天的リスクの第1位を占めていました。
ところが、今回発表された2024年版の解析では、驚くべきことに、中年期の「高LDLコレステロール血症」が難聴と並び、後天的リスクの同率第1位に躍り出たのです。
いずれも、認知症全体の7%のリスクを占めています。

なぜこれが「パラダイムシフト」なのか?
「LDLコレステロールが高いと危ないのは知っていた」と思われるかもしれません。
しかし、実はこの認知症との関連については、これまで医学界で十分なコンセンサス(合意)がありませんでした。
実際、日本の「高齢者脂質異常症診療ガイドライン2017」では、「高齢期における LDLコレステロールレベルと認知症発症に関しては一定の傾向を認めない」と記されていましたし、『Lancet』の2020年版の報告でも、高LDLコレステロール血症はリスク要因として登場していません。
そのため、以前は、LDL値を下げるのは主に「心臓や脳の病気を防ぐため」と説明していました。
しかし、今回の報告は、「中年期(65歳未満)におけるLDL値の高さこそが、10年以上経過してから認知症を発症するリスクを高める」ことを明確に示しました。
この劇的な認識の変化を受け、8月以降、LDLコレステロールの治療のハードルを大きく下げました。
現在の説明は大きく変わっています。
「LDLコレステロール値を下げるのは心血管系疾患よりもむしろ認知症予防にとって大切なんですよ」とお伝えし、スタチン(コレステロールを下げる薬)の積極的な処方を検討し始めています。
認知症を防ぐための「理想的なLDL目標値」は70mg/dL未満

では、具体的にLDLコレステロール値をどこまで下げれば、認知症リスクを効果的に下げられるのでしょうか?
英国の大規模研究では、LDLコレステロール値が3mmol/L、つまり116mg/dLを超えると、認知症のリスクが33%も増加することが示されています。
これは、厚生労働省が定める高LDLコレステロール血症の診断基準(140mg/dL以上)と比較しても、ショッキングな数値です。
さらに、2025年4月に『J Neurol Neurosurg Psychiatry』誌に発表された韓国の大規模調査の結果は、具体的な理想の数値を示してくれました。
この研究の結論は、「認知症を予防するには、LDLコレステロール値を70mg/dL未満に保つのが望ましい」というものです。
LDLコレステロール値が70mg/dL未満の人は、130mg/dL以上の人と比べて、全認知症リスクが26%、アルツハイマー病のリスクが28%も低下していました。
また、この研究では、同じLDLコレステロール値であっても、スタチンを使用している人の方が、全認知症リスクやアルツハイマー病のリスクが低いことも分かっています。
この事実から、心血管疾患のリスクが低くても、「若い頃からスタチンを服用するなどして、累積投与量を増やし、LDLコレステロール値を70mg/dL未満にしっかりと下げることが重要」だと考えています。
認知症リスクの45%は「変えられるもの」!
認知症のリスクには、「先天的リスク」(変えられないもの)と「後天的リスク」(変更可能なリスク)があります。
年齢、性別(女性の方がリスクが高い)、そして遺伝(ApoE遺伝子などでε4をホモで持つ場合、持たない人の11.6倍ものリスクになる)といった変えられない先天的リスクが55%を占めています。
しかし、希望を持つべきは、残りの45%は私たちの努力で変えられる「後天的リスク」だということです。

この「45%」という数字は、2017年版の35%、2020年版の40%から増加しており、予防への取り組みの重要性がますます高まっています。
💡 予防の「新常識」—変えられるリスクの要点
- 【最重要】リスク要因第1位:中年期の 高LDLコレステロール血症 (7%)
- 【目標】理想のLDL値:70mg/dL未満 (130mg/dL以上の人よりリスク26%減)
- 【希望】私たちが変えられるリスク:認知症全体の 45%
認知症は、発症すると健康への関心が低下し、他の病気のリスクを高める「万病の元」とも言えます。最近の論文では、認知症が日本人の死因の第1位(全死因の12.0%)に相当するという分析も発表されています。
私たちが積極的に取り組むべき、「変更可能な45%のリスク」の具体的な要因をご紹介します。
後天的リスク要因 | 認知症全体に占めるリスクの割合 |
---|---|
中年期の難聴の治療・補聴器の使用 | 7% |
中年期の高LDLコレステロール血症の管理 | 7% |
社会的な孤立の回避 | 5% |
低教育(学習習慣の維持) | 5% |
うつ病の予防・治療 | 3% |
頭部外傷の回避 | 3% |
運動習慣の獲得 | 2% |
禁煙 | 2% |
糖尿病の予防と管理 | 2% |
高血圧の予防と管理 | 2% |
適正体重の維持 | 1% |
節酒・禁酒 | 1% |
この最新のデータに基づき、皆さんのライフスタイルや健診結果を深く掘り下げて確認し、LDLコレステロール値のコントロールはもちろん、上記のリスク要因一つ一つに対し、具体的な予防策をご提案します。

「変えられる45%」に目を向ける勇気を持ち、一緒に未来の健康を守っていきましょう。
LDLコレステロール値や生活習慣について不安のある方は、ぜひ一度ご相談ください。