糖尿病のための簡単な運動療法
- 糖尿病
何故、運動は糖尿病によいの?
運動をすることによって
- 血糖を下げる
- 筋肉量を増やす
- 合併症を発症させない
などを達成することができます。
血糖を下げる
血糖を有効に下げるにはタイミングが重要です。
食後の運動は、食前の運動に比べて血糖をさげる効果が大きいのを利用しましょう。
では、食後何分くらいで運動を始めたらよいのでしょう?
食事の内容によっても変わりますが、一般には食後すぐだと消化不良になりやすい、また食後時間が経ちすぎると血糖が上がりきってしまうので効果が得られません。
お勧めは、食後30分前後の運動です。
食後は横になるほうが良いと聞いたことがあるけど、どうなの?
これはお勧めできません。
一つには逆流性食道炎を起こす可能性が高くなります。これは胃酸が食道に上がってきてしまい胸焼けなどの原因にもなります。
また、食後に横になると血糖の上昇を促します。
同様に、食後に座ったままの姿勢を維持すると血糖の上昇を招きます。できる限り食後の座位を避けるほうがよいでしょう。
「食後はソファでゆったりテレビ」を行きたいところですが我慢した頂くのが良いでしょう。
運動の簡単なポイントは
- 座っている時間を短くする
- 毎日5分だけきびきびした歩行をする
- 成人は8000歩、高齢者は6000歩
- 週2-3回筋トレをする(連続して2日以上運動をしない日を作らない)
筋肉量を増やす
筋肉は(骨格筋)はグルコース(ブドウ糖)を多く消費する臓器です。インスリンが筋肉に作用してグルコースをエネルギーに変えてくれます。車で言うとエンジンに相当します。
筋肉を増やすことによって、エンジンの排気量が増えるがごとく、エネルギーの消費が多くなり、血糖が下がりやすくなります。
筋肉量を増やすにはレジスタンストレーニング(筋トレ)が一番良いです。高齢者や減量中の方にはまず行っていただきたい運動です。
長時間の有酸素運動も優先される運動でありますが、筋トレは有酸素運動に比べてもHbA1c低下効果はほとんど同じという報告があります。
筋トレをする際の注意はあるの?
有酸素運動だけでは筋肉量の増加は期待できません。筋肉の衰えを抗うためにも筋トレは有用です。
しかし、
長時間の筋トレは健康によくないという報告があります。
週40分間の筋トレが一番良い(全死亡率が一番低下する)のですが、一方で週140時間以上の筋トレは死亡率をかえって上昇させるという報告があります。
合併症を発症させない
糖尿病の大きな合併症は、神経症、網膜症、腎症、があります。そのほかにも心血管の病気である狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などもあります。
血糖を下げることにより、これらの合併症を発症させないことができます。と言うより、血糖を下げてい合併症を起こさない、のほうが正しいかもしれません。
これが運動の本当の目標です。
これら、糖尿病による細小血管のダメージ、動脈硬化の進展、などを運動により阻止することができます。そうすることによって健康な人と変わらない寿命や生活の確保ができるのです。
運動の種類によって、結果が少しずつ異なるかもしれませんが、あらゆる運動は上記の合併症のリスクを減少させます。
あきらめず、焦らず、急がずに自分のできる範囲で好みに合わせて運動を積極的にすることが大切です。
運動をする前にチェックしておくべきこと
いろいろな種類の運動がありますが、運動をしてはいけない状態というのは、肺炎や脳梗塞などの安静が必要な急性疾患を除けば、他の状態では運動可能と考えてよいです。
●無症状の方で軽度~中等度の運動(特に日常生活範囲内):
事前の身体スクリーニング検査は不要とされています。
●心血管疾患(狭心症・心筋梗塞・動脈瘤など)リスクの高い方や高強度の運動:
コントロール不良の高血圧、
未治療の増殖性網膜症、
自律神経障害、
平衡感覚障害、
足部潰瘍
などがあれば要注意です。
短時間の低強度の運動から開始し、徐々に継続時間と強度を増やす必要があります。
●網膜症がある場合は筋トレや高強度の有酸素運動で硝子体出血や網膜剥離を発症することがあるので要注意です。
●糖尿病性腎症では、特別な運動制限は必要ないとされています。
●血圧:
160/100 mmHg以上:運動を行う場合でも散歩程度の軽い運動にとどます。
180/110 mmHg以上:運動を控えて休養しましょう。
●血糖降下薬(糖尿病の薬)使用中:
運動後の低血糖に注意。
運動後はインスリン感受性が良くなるので、場合によっては低血糖が数時間以上続くことがます。
運動後の血糖が90mg/dl以下の場合は追加の炭水化物や砂糖(グルコース)の摂取を考ましょう。
長く寝すぎると血糖に良くないのはホント?
ホントです。
睡眠に関してはいろいろなことが言われていますが、8時間以上の睡眠は血糖に良くないです。
不規則な睡眠(睡眠時無呼吸症候群、不眠症など)も血糖値に良くないです。
また、生活リズムが夜中心の人は昼間中心の人よりも血糖が悪くなる可能性があります。
運動の習慣があれば座っている時間が長くてもよいの?
残念ながら「NO」です。
座っている時間が長いと心血管疾患、がん、糖尿病になりやすくなることが明らかになっています。
悲しいことに日本人は世界の中でも座っている時間が長い国民トップです。
運動をすればこれが打ち消されるのかというと、そうではないようです。
運動をしっかりしている人でも、座っている時間が長いほど肥満になりやすいという報告があります。
できれば30分ごとに座位を中断してゆったり歩くか筋トレをしてください。これだけでも血糖降下作用はあります。
まとめ
- 座位時間を短くする。
- 食後の身体活動を意識する。食後30分から開始。
- 有酸素運動と筋トレの両方する。
- 週2日をあけないで運動をする。
- 長すぎる筋トレは要注意。
さあ、運動をして元気に歳を重ねていきましょう!