簡単な「糖尿病標準診療マニュアル2024」
- 糖尿病
一般クリニック向けの糖尿病の診療マニュアルが改定されました。
毎年4月に「日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会」が改定しているものです。
薬の使い方などがわかりやすく解説してあり、一般のかたにも十分理解できるものなので簡単にお話をしてみたいと思います。
糖尿病の薬の使い方の順番
ご存じのように糖尿病の際に血糖を下げる薬は沢山あります。その種類も進化してきて、10年前には花形だった薬も今では使い方を見直される物も出てきます。
また、新しい薬でいわゆる「ゲームチェンジャー」的な薬も出てきました。
今回のマニュアル改定では、そんな流れを汲んでいます。
まずどのような薬があるのかを見ていきましょう。
糖尿病の薬の簡単な分類
血糖をコントロールする内服薬には大きく分けて4種類あります。
1,インスリンの効きをよくする
=・ビグアナイド薬
・ブホルミン(ジベトス®)
・メトホルミン(グリコラン®、メトグルコ®)
・チアゾリジン薬
・ピオグリタゾン(アクトス®)
2,インスリンの分泌をよくする(促進する)
=・SU薬
・グリメピリド(アマリール®)
・グリクラジド(グリミクロン®)
・グリベンクラミド(オイグルコン®)
・速効性インスリン分泌薬(グリニド系薬)
・ナテグリニド(スターシス®、ファスティック®)
・ミチグリニド(グルファスト®)
・レパグリニド(シュアポスト®)
・DPP-4阻害薬
・シタグリプチン(グラクティブ®、ジャヌビア®)
・ビルダグリプチン(エクア®)
・アログリプチン(ネシーナ®)
・リナグリプチン(トラゼンタ®)
・テネリグリプチン(テネリア®)
・サキサグリプチン(オングリザ®)
・トレラグリプチン(ザファテック®)
・オマリグリプチン(マリゼブ®)
・GLP-1受動体作動薬
・セマグルチド(リベルサス®)
3,腸からの糖の吸収を遅くする
=・α-グルコシダーゼ阻害薬
・ボグリボース(ベイスン®)
・ミグリトール(セイブル®)
・アカルボース
4,糖を尿の中に混ぜて出す
=・SGLT2阻害薬
・イプラグリフロジン(スーグラ®)
・ダパグリフロジン(フォシーガ®)
・ルセオグリフロジン(ルセフィ®)
・トホグリフロジン(アプルウェイ®、デベルザ®)
・カナグリフロジン(カナグル®)
・エンパグリフロジン(ジャディアンス®)
上記内服以外にインスリン注射があります。
ゲームチェンジャー
今まで注射薬しかなかったものが、この4年前から内服薬として利用できるようになり、この効き目がとてもよく、おまけに血糖降下のみではなく他にも効果があるという薬がでてきました。
今までは、その薬を最後の最後に使うような形だったのを、もう一段早く使うような形にしたのが新しいマニュアルです。
そして、古い薬は見直されることになりました。
新しい薬は「GLP-1受動態作動薬」と言われる薬で
血糖依存性にインスリン分泌を促進し、血糖降下作用を発揮する薬です。
血糖が高くなったときのみに作用するので、単剤では原則低血糖を起こしません。
また、胃から腸への排出を遅らせたり、脳への直接作用で食欲抑制の効果があり、結果として体重減少作用があることが特徴的です。
ただ、元来注射薬として開発されたものを、内服薬に変えているので飲み方に工夫が必要となっています。
「空腹時に約120mlの水で服用し、服用時及び塾正午30分は飲食や他の薬剤の服薬を避ける必要がある」ということです。
これをしっかり守らないと、薬の効果が得られません。この内服の仕方が守れない方は処方の対象外となります。(新しい薬なので薬価は他の薬に比べると高い設定になっています)
「やせ薬」としての使用
この薬を使うとかなり体重が減少するので、美容目的で(痩せる目的で)「安全に痩せる薬」としてネットで情報が拡散し、痩せる目的で処方が横行し、本来の血糖コントロールに必要な方に薬が届かないという現象が出てきました。
このような問題を踏まえ、今回のマニュアル改定では「美容、瘦せる目的、ダイエット」などに処方されることは「適応外」であることを強く記載されています。
見直される薬
2023年までは「GLP-1受動体作動薬」の代わりに、「SU薬」が使われていました。
SU薬はすい臓のインスリンを分泌する細胞(β細胞)の細胞膜上に結合して血糖上昇とは無関係にインスリン分泌を刺激し続ける薬剤であったので、低血糖リスク、体重増加のデメリットがあるために見直されました。
2023年と2024年の薬の使い方の変化を下の図に示します。
この1年で薬の使い方が変わってきて、見直される薬、新しく標準的に使われる薬がでてきました。
新しい薬が標準的治療に挙げられると安心して使うことができます。