朝食は「食べる」、「食べない」、どっちがいい?
- 糖尿病
今回のテーマは、「朝食を抜くと、なぜ良くないのか?」。健康的な毎日を送るために、朝食の重要性を研究論文を基に解説いたします。(Glycative Stress Research 2017; 4 (2): 124 -131)
朝食欠食が昼食後の血糖値を急上昇させる
近年、朝食を抜くことと、糖や脂質の代謝に関連する生活習慣病との関連が注目されています。私たちの研究では、朝食を抜くと、朝食をきちんと食べた場合に比べて、昼食後の血糖値が顕著に上昇することが明らかになりました。特に、血糖値の最大変化量(ΔCmax)と、血糖値曲線の下面積(AUC)が、朝食を抜いた場合、有意に高かったのです。これは、朝食を抜くと、その後の食事で血糖値が上がりやすくなることを示しています。

Glycative Stress Research 2017; 4 (2): 124 -131
血糖値の変動幅が大きくなることの危険性
食事を摂ると血糖値は上昇し、その後インスリンの働きで徐々に下がります。しかし、朝食を抜くと、昼食後の血糖値が急激に上昇し、その後も急激に下降するという、血糖値の変動幅が大きくなる傾向が見られます。このような大きな血糖値の変動は、体に酸化ストレスを与え、糖尿病の合併症(網膜症や動脈硬化など)のリスクを高める可能性が指摘されています。また、血糖変動が大きいほど、糖化アルブミンという、糖化ストレスの指標となる物質が増加しやすいこともわかっています。
朝食の種類も重要
朝食を摂ることは大切ですが、どのような朝食を摂るかも、昼食後の血糖値に影響を与えることがわかりました。この研究では、白飯、コンビニエンスストア食(おにぎりとチョコレートデニッシュ)、牛丼を朝食として摂取し、その4時間半後に白飯の昼食を摂るという試験を行いました。
その結果、昼食後の血糖値の上昇は、
・コンビニエンスストア食、
・白飯、
・牛丼
の順に高くなりやすい傾向が認められました。
●コンビニエンスストア食は
糖質が多く、食物繊維が比較的少ないため、食後の血糖値が上がりやすかったと考えられます。
●白飯は
主に糖質で構成されているため、食後の血糖値が比較的上昇しやすい傾向にありました。
●一方、牛丼は
タンパク質、脂質、食物繊維をバランス良く含んでいるため、白飯に比べて血糖値の上昇が緩やかでした。タンパク質はインスリンの分泌を促し、脂質は胃の排出速度を遅らせる働きがあると考えられています。また、食物繊維は糖の吸収を遅らせる効果があります。
朝食とグルカゴンの関連
この研究では、早朝のグルカゴン値が、朝食後の血糖値の上昇と正の相関を示すことがわかりました。グルカゴンは血糖値を上げるホルモンですが、この結果は、健康な方でもグルカゴン値が高いほど、食後の血糖値が上がりやすい可能性を示唆しています。
バランスの良い朝食をしっかりと
今回の研究結果から、朝食を抜くと昼食後の血糖値が急上昇し、血糖値の変動幅も大きくなるため、体への負担が増加する可能性が示唆されました。また、朝食の種類によっても昼食後の血糖値に影響があることがわかりました。
皆様には、食物繊維を適度に含み、タンパク質や脂質もバランス良く摂取できる朝食を 摂ることをお勧めします。腹持ちが良く、栄養バランスの整った朝食は、昼食後の血糖値の急激な上昇を抑えるのに役立つと考えられます。
上田診療所 上田晃