外来
平日
受付
9:00-12:30
13:30-17:15
診療
9:30-
14:00-
土曜
受付
9:00-12:30
診療
9:30-

上田診療所の17年間の栄養指導

上田診療所で栄養指導を始めてから17年が経過しました。

その間にいろんな患者さんがいらして、様々な栄養指導をお受けになったことと思います。そんな中で上田診療所の管理栄養士がこの17年間を振り返ってまとめてくれました。

あっという間だったと思います。

17年間で456名の患者さんに対応してきました。主には糖尿病の方ですが、高血圧、肥満、等の方もご利用して頂きました。

その内容を見て、今後何か役立つことが見つかればと思います。特に、働く人々の食生活がどのような形に変わってきているか、またこれからどんな風に変えていくべきなのかを見ていきたいと思います。

年齢、BMI、病態傾向、栄養指導内容と食生活習慣を中心に見ていきます。



栄養相談の流れ


外来患者さんの中で、血糖が高い方、血圧が高い方、血液データでコレステロールが高い方などに内服薬を処方する前に食生活で改善が図れそうな方はまず管理栄養士による栄養指導を受けてもらうように話をしてみます。しかし、残念なことに半分以上の方は栄養指導を受けるのをお断りになります。時間の都合、以前に受けたことがある、興味がない、と言った理由が主なものです。

実際、栄養指導を受けるのは面倒くさいというところがあると思います。30分近く食事の話を聞いて何か良いことがあるのか?と思われるのは理解ができます。

一方で、実際に管理栄養士による栄養指導を受けた後に、聞いておいてよかった、と言われる方は多いです。食事と言うものは人により「常識」がずれていることが多いです。

牛乳を2リッター毎日飲むのが当たり前と思っている方がおられたのにはびっくりしました。お酒の量も人それぞれで、酒量が多い方の周りには、同様の方が多いので飲酒量が多いのが当たり前ということもあり、一般的な飲酒量を知っておくことは良いことと思います。

医師が栄養相談のメニューを考え、それに従って管理栄養士が指導をする。その後その内容を実行して頂き、結果がどうなるかを見ていく、と言った流れです。

以下、上田診療所の栄養相談の流れになります。




相談受診者数の推移


以下はこの17年間の栄養指導を受けた方の数の移り変わりです。

2020年、2021年は新型コロナウィルス感染で栄養指導を受ける方が極端に減っています。



年代別患者数です。


50歳代が一番多く、次が60歳代となっています。ここ日本橋というオフィス街ではやはりこの50代、60代が生活習慣病の中心的な世代だったと言えそうです。また、栄養指導を受ける時間的余裕のある世代という見方もできそうです。現在の食生活環境を見ると、今後は若年にシフトするかもしれません。



BMI


BMIは、18.5から24.9までが多いです。次に25から29.9までです。18.5~24.9というとほとんど正常です。その割合が多いという事は、肥満の方よりもそれほど太っていない方が多かったということで意外な感じです。BMI≧25の方はそのほとんどが40~60歳の男性でした。



HbA1c


糖尿病栄養指導の方ではHbA1cが7.0~7.9%の方が一番多かったようです。

6.0~6.4、6.5~6.9 の方の方が8.0~8.9 よりも多いというのは意外です。
糖尿病がそれ程悪化していない状態の方がむしろ糖尿病食事指導に興味があるという結果は重症化する前に、あるいは薬の内服をする前に食事指導で治したいという意欲の表れかと思います。



疾病の内訳


食生活の改善が必要な状態は、いわば生活習慣を改善するということにつながります。それが生活習慣病です。

生活習慣病の範囲や定義には、はっきりと定められたものはありませんが、健康増進法では「がん及び循環器病」、「健康日本21」では、「がん、心臓病、脳卒中、糖尿病等」と位置付けられています。

「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と定義することが適切であると考えられています。

上田診療所で栄養指導を行った方の多い疾病は以下のようです。

「糖尿病 + 高血圧 + 脂質異常症」
「糖尿病 + 高血圧」
「糖尿病 + 肥満」
「糖尿病 + 腎臓病」

の順です。

これは医師が栄養指導の指示を出した数に基づいています。
糖尿病が関係しているものが上位を占めています。糖尿病の方は他の病気を合併していることが多く、特に男性はその傾向が強かったです。やはり食生活と糖尿病の関係は一番強いインパクトがあるという印象があります。



主な指導内容


自分の病気のことをよく知らないという方が多いのは、正直びっくりすると同時に寂しく、ドキっとすると同時に反省する気持ちになります。医師の立場からすればあれほど血糖のコントロールが大事だと話していたのは何だったのか?と思う反面、医師としての説明不足に気づかされるものです。

1日2回、あるいは1日1回しか摂らないとおっしゃる方もいますが、1日3食食べることで代謝が朝早くから動き出し、糖尿病がコントロールしやすいという事は言を待たないです。等々当たりまえのことが書かれていますが、実はとても大切なことが多いです。

こちらは複数項目選択での結果です。皆さまご自分の血糖管理が必要というこては分かっているのであとは実行あるのみです。しかし、大体にしてこのような当たりまえのことをするのが大変なのが日常です。そのような勇気づけ、後ろから押してもらう、というのが管理栄養士の仕事と思います。

仕事場が日本橋周辺ということもあり、昼食は外食が多く、また夜は接待、海外出張、単身赴任など食生活が不規則になりやすいようです。

主な指導内訳

 ①塩分について
 ②病気を理解し食事量をコントロールする
 ③野菜を食べる
 ④タンパク質の種類
 ⑤ゆっくりよく噛んで食べる

という項目でした

男性受診者の特徴は

 ①外食について
 ②炭水化物の重ね食べ
 ③脂質の摂りすぎ
 ④アルコール

女性受診者の特徴は

 ①油の質
 ②作る量・買い物の量
 ③間食・果物
 ④ストレス解消

などで、男女の間では違いがはっきり見えます。

2008年4月以降

特定健診制度が始まって以来は、内臓脂肪型肥満や糖尿病に重きを置いた指導が多くなりました。

 ①野菜から食べる
 ②ゆっくりよく噛んで食べる
 ③炭水化物を重ねない

などの指導が増えました。

塩分摂取が食事量を左右するのは確かです。

日本の食文化から多く摂取するのはやむを得ないですが、減塩の意識を持っていただくことが大切と感じます。
また高血圧を指摘されていない受診者の塩分が過多でした。



まとめ


以下は上田診療所で栄養指導を担当してくれている本間栄養士の言葉です。

上田診療所で栄養指導を受けて頂いた受診者の皆さまには忙しい合間をぬってきていただいたことに感謝します。


今罹患している病気をこれ以上悪くしないように、そして病名が付いていない方では病気にならないように予防する事が大事であり、それに気づいていただけるような指導が大切と思います。

昨今の世の中の状況でストレスがたまり、食事のコントロールができず、食べ過ぎ、飲みすぎになり、また間違った情報やサプリメントを信用することになってしまうので、事前に知る事ができるためにも栄養指導を受けていただくことは良いことと思います。

17年の年数経過で、「食事が大切である」という考え方は定着してきていると思います。受診者一人一人は皆異なるので、テーラーメイドで指導することが大切と思っています。受診者の皆様に向き合って話を聞くことが重要です。

検査値を良くすることだけが大切なのではなく、生活習慣や行動変容を実践した結果として検査値が改善され、その生活習慣や行動変容が持続できるような指導ができるようにしたいと思います。

薬はとても大事ですが、「食べる」ことに気をつけることで薬の効果がより強く出る事を理解して頂ける指導をしていきたいと思っています。

毎月、第4金曜日の午後に栄養指導を行っております。
診察室、電話での予約、Zoomを使っての指導も対応しておりますので、是非ご利用ください。

一覧へ