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EORAとは?高齢発症関節リウマチについて

高齢発症関節リウマチ(EORA)

関節リウマチ(RA)というと、中年女性に発症することが多いと認識されることが一般的です。

しかし、近年の平均余命の延長に伴い発症が高齢化し従来の中年発症を上回ってきていることがわかりました。

意外にも、女性よりも男性に多いという特徴があります。

リウマチの発症のピークの推移を見てみると、、

1970年代は40から50代がピークであったのが、現在では70歳あたりがピークになっ

ています。

時代の変化と共に病気の発症の仕方も変わってくるのは驚きです

これは世界的な傾向の様です。

高齢発症の関節リウマチ(EORA Elder Onset RA)は

一般の関節リウマチとはやや病態や治療が異なってきていることに注意が必要です。

一般の関節リウマチは手の指、手首、肘、などの小さい関節が痛くなり腫れてくることが多いのですが、EORAは大きな関節(股関節、膝、など)に症状が亜急性、急性発症、することが特徴です。

また、血液検査でもリウマチ反応が出ないことが多いので見逃されやすいという特徴もあります。

現在の関節リウマチの分類基準は、小関節の症状を中心に作られているので、大関節の症状が強いEORAではこの基準を満たさないことが多く、見逃されるケースがあります。

またこの基準では血清反応が陽性の方であれば感度は90%近いのですが

陰性の方は感度が15%近くまで低下してしまうのでこの点でもEORAには向いていないのです。

従って診断する際に注意しなければいけないことは、症状を見逃さない臨床的総合判断が重要になってきます。

2020年にリウマチのガイドラインが発表されています。

これによると、

治療の第一段階として

一般の抗リウマチ薬(メソトレキサート等のcsDMARDs)を早めに開始すること、

病気の勢いを抑え込めるまでの量をしっかり使うこと、

とされています。

第2段階として

csDMARDsで十分効果が得られない場合は次の治療に躊躇うことなく移行すること、

すなわち生物学的製剤などの分子標的薬の使用が推奨されています。

EORAでは上記の第一段階から第二段階への移行を前倒しにする必要があるようです。

理由は

年齢とともに肝機能、腎機能が低下し、csDMARDsが代謝されずに体の中に残ってしまい

副作用がでやすくなるからです。

EORAでは上記のようにDMARDsが使いにくいこともあり、

ステロイドで症状を抑えることが多くなる傾向があります。

ステロイドは症状をとても強く抑えることができますが、ご存じのようにステロイドには副作用もあります。

しかし、ステロイドなどの薬を使わずに症状の悪化を放置しているとフレイル(心身の状態が低下し、生活機能が障害されること)が進行してしまい、更に生活レベルを悪くしてしまう悪循環に入ってしまいます。

では、どうするかです。

欧州ではステロイドの有用性を認め、短期間の使用に限って有効であるとしてい

ます。

具体的にはプレドニン換算およそ30㎎から始めて、3か月以内に中止。単回投与で筋肉注射(メチルプレドニゾロン120㎎)、静脈注射(メチルプレドニゾロン250㎎)で使用する方法です。

これはあくまで選択肢の一つで、日本ではあまり一般的ではありません。

ステロイドの話をもう少ししましょう。

ステロイドを使用していると、クッシング症候群(体の中からステロイドが沢山作られる病気)のような症状になると言われています。

クッシング症候群を治療しないでいると、心血管病変での死亡リスクは16倍にもなると言われています。

これは5-10㎎の連日内服を同等と考えれれています。

また

ステロイド5㎎を3週間内服すると、100%の症例で副腎機能の低下が起こると報告されています。

5年後の関節破壊に関してみれば

生物学的製剤(bDMARDs)を3年以上使用で関節破壊リスクは85%低減する一方

3か月以内のステロイドは関節破壊のリスクを上げています。

これは自覚症状、検査所見が改善するので医師がDMARDsの治療を怠るためかもしれません。

そのような理由で欧州では短期間のステロイドの使用を考えているわけです。

では、

csDMARDsを使えない、ステロイドは副作用のため使いたくない、となると他の治療

法を考えなくてはなりません。

次の候補として挙がってくるのが、

生物学的製剤(bDMARDs)という選択肢です。

コスト的には高いですが、csDMARDsの様な副作用があまり出ないので高齢者には使いやすい薬です。

csDMARDsは先ほど話したように、高齢者では腎機能、肝機能が低下しているので副作用が出やすい一方で、

bDMARDsはタンパク製剤なので、タンパク質は体内でアミノ酸に分解、作り直されるため代謝排泄という観点では高齢者では使いやすいのです。

但し、感染症には注意が必要です。

高齢者RAの感染症は

リウマチのコントロールが悪いと悪化する一方、

薬を使うと免疫抑制かかるので悪化するというジレンマがあります。

しかし、リウマチの治療を優先した方が良いようです。

bDMARDsを一時休薬し、その後再開した群と再開しなかった群を比較すると再開しなかった群の方が感染症の発症が多かったという報告があります。

感染リスクとリウマチの活動性抑制により得られるメリットを考えると治療の第二段階に早めに入る(bDMARDsによる治療を開始する)ことはメリットがあると思います。

生物学的製剤(bDMARDs)が有効でなかった場合にはJAK阻害薬(tsDMARDs)を使うという選択肢も出てきています。

EORA(高齢発症関節リウマチ)の治療はまだ始まったばかりという印象がありますが、これから更に治療方針が確立されていくと思います。

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