関節リウマチと顎骨壊死
- リウマチ
顎骨壊死
今回は、骨粗しょう症の薬と、顎骨壊死の話です。
リウマチとどんな関係があるの? と思われる方も多いと思います。
関節リウマチという病気は骨粗しょう症(骨が脆くなる)を合併することが多い病気です。
その骨粗しょう症の治療薬が、顎骨壊死を起こすことがある、という話です。
特に、出血を伴う歯科治療(抜歯)等を行った後に顎骨壊死を起こしやすいという報告があります。
(ちなみに、 虫歯を削る、詰め物、被せ物店、クリーニングなどの歯科処置は大丈夫です。)
顎骨壊死って?なんですか?
顎の骨の一部が壊死した状態になることで、痛み、腫れ、膿等が出ます。
口の中にある細菌(もともとある)が抜歯等の外科的処置の際に感染し、症状がでます。
感染症ですからしっかり抗生剤を使用すればよいことになります。
しかし、
骨粗鬆症の治療薬の経口ビスホスホネート製剤や抗ランクル抗体薬(プラリア)を使用している人の顎骨壊死が発生頻度が調査されています。
・経口ビスホスホネート製剤(ボナロン、ベネット)
1~69人/10万人
・静注ビスホスホネート製剤(ボンビバ、リクラスト)
10~90人/10万人
・抗ランクル抗体(プラリア)
10~30人/10万人
・関節リウマチ患者全体
0.094%
・65歳以上の女性患者
0.26%
が認められています。
歯科治療をする場合はどれくらい前に薬を中断すればよいでしょう?
実は休薬の必要性については意見が分かれています。 最近は歯科治療の前に休薬する必要はないという考えの方が多くなっています。
- 半減期が長い薬を短期間中止しても予防はできそうにない。
- 休薬によって発症に減少効果が証明されていない。
- 抜歯する適切な時期を逃してしまう。
- 休薬により、顎骨壊死のリスクより骨折のリスクの方が高くなる。
などが主な理由です。
但し、関節リウマチで
- ビスホスホネート製剤や抗ランクル製剤などの投与期間が長期である
- ステロイド投与などのリスク因子がある。
- 歯科処置に時間的余裕がある。
等の場合は、治療前2か月間は休薬することがあります。
その際は、歯科治療が終了して炎症が無くなった時点でビスホスホネート製剤を再開します。
*骨折リスクの高い患者さんは、休薬することにより骨吸収が進んでしまい悪化することがあるので慎重を要します。
顎骨壊死になった時の治療は?
症状が軽症であれば抗菌薬の内服・点滴で治療し、重症の場合は外科的切除をすることになります。
顎骨壊死になった場合は他の感染症の際と同じように関節リウマチの薬(メソトレキサートや生物学的製剤)は中止し、治癒後に再開します。
その後、骨粗鬆症の治療は再開できますが骨吸収作用のない
のある骨形成作用のあるテリパラチド(フォルテオ、テリボン)や活性型ビタミンDが主に使われます。
骨粗鬆症の薬を10年ほど使っているが、そのままでよいの?
骨粗鬆症の治療中は、定期的に骨折リスクを評価と見直しをするのが良いでしょう。
- 骨密度検査
- FRAX(骨折リスク予測ツール)検査
を利用しましょう。
関節リウマチの高齢者は骨密度が低下し、骨折リスクも増加するので、治療継続が必要な場合が多いようです。
骨粗鬆症の予防はできるの?
以下のことに注意をしてください。
- ステロイドをできる限り使用しない、あるいは少なくすること。
- 関節リウマチの進行を抑えるために、早期から抗リウマチ薬を使用すること。
- 一日700~800㎎のカルシウム摂取。
- ビタミンDを多く含む魚類などの接種。
- 適度な日光浴(冬は30分、春秋は15分、夏は5分前後)
- ビタミンDのサプリメントも有効