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高齢発症関節リウマチ EORA

高齢発症関節リウマチ

今回は順天堂大学膠原病内科教授の田村先生の話を参考にしてみます。

人口の高齢化に伴い、高齢発症のRAが増えています。

高齢者のRAは抑うつ、サルコペニア、フレイルになりやすいので早期診断、早期治療が重要です。

元来RAは30-50歳代が後発年齢でしたが、高齢者が多くなったために高齢発症RAも増加してきています。
一般のRAと異なる点は
・男性に多い
・急性発症である
・大関節が侵される
・肩関節炎が初発が多い
・リウマチ因子、抗CCP抗体陰性
・炎症反応高値
・滑膜炎の検出は早期診断に有効
  等が多いです。

これに似た病気でリウマチ性多発筋痛症(PMR)という病気があります。
・50歳以上、70~80歳で発症
・急速な両肩関節周囲の疼痛
・上肢や臀部、大腿の筋痛
・朝のこわばり
・リウマチ因子、抗CCP抗体陰性
・約10%に滑膜炎を伴う
・プレドニンが著効する(10~20㎎)

どうでしょう? 
とても似ていませんか?
PMRの話はまた後日しようと思います。
今回は高齢発症関節リウマチの話をさせて下さい。

高齢発症RAの治療

目標を立てて治療をする。すなわち
ある一定の期間に一定の状態にならなければ、次の薬を使って治療を進める。
ということです。

これは
3か月~6か月の間で臨床的寛解を目標にする、とうことが言われています。
これは高齢者に限っての話ではありません。
「臨床的寛解」って何?ですね。
これは
病気の活動性の指標という計算式があって、それに検査データや症状を当てはめて計算をした結果を使って判断しよう、というものです。
これには DAS28 とかSDAI、CDAI、HAQ等があります。

RAの診断が確定したら、従来型合成抗リウマチ薬(conventional synthetic disease-modified anti-rheumatic drugs: csDMARDs)を使って速やかに治療に入る(methotrexate: MTX を中心に)。
臨床的寛解にならなかったら、
生物学的抗リウマチ薬(biological DMARDs: bDMARDs) 
あるいは
分子標的抗リウマチ薬のJAK阻害薬を使ってみることが推奨されています。

高齢者は合併症、感染しやすい等があるため薬の量を少な目に使わざる得ないことが多いです。
そのために十分量のDMARDsが使えなくてステロイドを長期使用する頻度が高くなりやすいです。このような場合には感染症や骨粗鬆症に十分注意することが必要です。感染症のリスクはbDMARDsよりも高いという報告もあります。

MTX

csDMARDsの中心的な薬のMTXは腎機能がある一定以下(eGFR<30)の場合は使いにくいです。
用量依存性の副作用(使う量が多くなればなるほど出てくる副作用)は、口内炎、嘔気、肝障害、骨髄抑制等です。副作用を軽くするために葉酸を使用することがあります。
用量非依存性の副作用としては、急性間質性肺炎(MTX肺炎)があります。
感染症、MTX関連性リンパ増殖性疾患(リンパが腫れる)などにも注意が必要です。

MTX以外のcsDMARDs

サラゾスルファピリジン、ブシラミンは感染症のリスクが低く使用しやすく、またタクロリムス、イグラチモドも使用されることが多いですが、高齢者で副作用の頻度が高い報告があります。

bDMARDs

bDMARDsは大きく分けると3種類(TNF阻害薬、IL-6阻害薬、T細胞共刺激分子調節薬)がありますが,高齢者にはいくつか利点があるようです。
これらbDMARDsは副作用として重篤な感染症が問題となりますが、一方では代謝の影響を受けにくいためそれ以外の副作用が少ないこと、他のリウマチ治療薬を減量できる可能性があること、炎症の沈静化により全身状態が改善し免疫能が向上すること、などの可能性があります。

JAK阻害薬

現在、5種類が認可されています。内服のため高齢者には使用しやすい反面、帯状疱疹を発症する頻度がやや高い等があり、高齢はリスク因子かもしれません。

高齢者の方が注意すべきこと

年齢と共に免疫能が低下するために感染症や悪性腫瘍のリスクが高くなります。
従って、上記の薬を使用する際には、十分な検査、予防(各種ワクチン、肺炎予防の薬等)が重要です。
また、骨粗鬆症による骨折などにも注意し、寝たきりなどによる免疫能低下や全身状態悪化を防ぐべきです。
高齢発症の関節リウマチでは早期診断、早期治療を行い、フレイルにならない注意が必要です。

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