診察室で「先生、私のお薬の名前、カタカナばかりで覚えにくいわ」というお声をよく伺います。
実は、リウマチの薬には「一般名(成分の名前)」「商品名(製薬会社がつけた名前)」の2つがあり、さらに最近では「バイオシミラー」も登場して、ますます複雑になっています。
皆さんが自分の治療をより深く理解できるよう、整理してご紹介しますね。

1 生物学的製剤(bDMARDs):炎症の火元を狙い撃つ9つの選択肢

生物学的製剤は、関節の炎症を引き起こす「サイトカイン」という物質を直接ブロックするお薬です。日本では2003年に最初の薬が登場して以来、現在までに9種類の成分が承認されています。

点滴なのか、皮下注射なのか、あるいはどの物質を狙うのかによって、以下のように分類されます。

炎症物質 (サイトカイン) 生物学的製剤 (抗体) 狙い撃ち!

イラスト:生物学的製剤のターゲット攻撃イメージ

関節リウマチの強い腫れ・痛みの根源である「サイトカイン(炎症の原因物質)」を、薬の成分(抗体)がまるで鍵と鍵穴のようにピタッと吸着して活動を止める、非常に精密な「狙い撃ち(ピンポイント)治療」のイメージです。

ターゲット 一般名 (成分名) 代表的な商品名 (先発) 特徴
TNF-αを抑える インフリキシマブ レミケード® 日本初の生物学的製剤。点滴で投与します。
エタネルセプト エンブレル® 皮下注射。自己注射も可能です。
アダリムマブ ヒュミラ® 世界的に広く使われている皮下注射薬です。
ゴリムマブ シンポニー® 4週間に1回の皮下注射で済むのが特徴です。
セルトリズマブ シムジア® 胎盤を通過しにくい性質があり、妊婦さんにも考慮されます。
IL-6を抑える トシリズマブ アクテムラ® 日本で開発された薬。点滴と皮下注射の両方あります。
サリルマブ ケブザラ® 皮下注射。強力な炎症抑制効果が期待できます。
T細胞を抑える アバタセプト オレンシア® 炎症の司令塔であるT細胞の活性化を抑えます。
TNF-αを中和 オゾラリズマブ ナノゾラ® 最も新しく登場した、分子量の小さい製剤です。

【耳寄り情報】お財布に優しい「バイオシミラー(BS)」

先発品の特許が切れた後に発売される、同等の効果を持つお薬です。現在、以下の3つの成分でバイオシミラーが使用可能です。

  • インフリキシマブ BS(レミケードのバイオシミラー)
  • エタネルセプト BS(エンブレルのバイオシミラー)
  • アダリムマブ BS(ヒュミラのバイオシミラー)

今後、シンポニーやアクテムラのバイオシミラーも登場する予定です。医療費を抑えたい方は、ぜひ「BS(ビーエス)に切り替えられますか?」と相談してくださいね。

2 JAK(ジャック)阻害薬:最新の「強力な飲み薬」

「注射は苦手だけど、生物学的製剤と同じくらいしっかり治したい」という方に選ばれるのが、JAK阻害薬です。細胞の中にある「情報の通り道(JAK)」をブロックすることで、炎症の連鎖を断ち切ります。

現在、日本では以下の5種類が使用されています。

細胞の外 細胞の内 情報の通り道 (JAK) 刺激を受信 炎症指令の核 JAK阻害薬 (飲み薬) STOP

イラスト:JAK阻害薬のシグナル遮断イメージ

細胞の表面でキャッチした「炎症を起こせ!」という刺激が、細胞の内部を通って核(コントロールセンター)へ伝わるのを、お薬が「通行止め(STOP)」のように完全に遮断して、リウマチの活動を封じる仕組みを分かりやすく説明しています。

一般名(成分名) 商品名 特徴
トファシチニブ ゼリアンズ® 2013年に登場した、世界初のJAK阻害薬です。
バリシチニブ オルミエント® 1日1回の服用。アトピー性皮膚炎などにも使われます。
ペフィシチニブ スマイラフ® 日本で開発されたJAK阻害薬です。
ウパダシチニブ リンヴォック® 非常に高い寛解達成率が報告されている期待の薬です。
フィルゴチニブ ジセレカ® 副作用のリスクを抑えるよう設計された最新鋭の薬です。

非常に大切な注意点

JAK阻害薬は非常に効果が高い反面、「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」などの感染症のリスクが生物学的製剤より少し高い傾向にあります。服用を始める前には、ワクチンの接種を検討するなど、医師としっかり相談しましょう。

3 OTC(一般用医薬品)との賢い付き合い方

「OTC」とは「Over The Counter」の略で、処方箋なしでドラッグストアなどで買える、いわゆる「市販薬」のことです。リウマチ患者さんにとっても、OTCは身近な存在ですよね。

痛み止め(NSAIDs)

ロキソニンSやイブなど。急な痛みの緩和に使われますが、胃腸や腎臓への負担に注意が必要です。

目薬

リウマチに伴うドライアイに対して、ヒアルロン酸配合の目薬などが使われます。

湿布・塗り薬

特定の関節が痛むときに補助的に使われます。

2026年 制度改正トピック

【重要】2026年からの「保険適用」の変化に注意!

現在、日本の医療制度では、大きな変化が議論されています。2026年度から、OTC医薬品と同じ成分・効果を持つ「一部の処方薬」が、公的医療保険の対象から外れる可能性があるのです。

これまでの病院処方 保険が使える (原則 3割負担) 移行 薬局・薬店での購入 全額自己負担へ (実質 10割負担) 湿布

イラスト:2026年医療保険制度の改正イメージ

これまで医師の処方箋によって、通常の健康保険を使って安く手に入っていた湿布薬やアレルギー薬などが、2026年から「全額自己負担」でのドラッグストアでのセルフ購入へ移り変わる可能性がある、という制度改定の重要ニュースを解説した図です。

対象となる可能性がある薬:

  • 風邪薬や湿布薬
  • アレルギー薬(花粉症の薬など)

これが導入されると、これまで病院でもらっていた湿布や軽い痛み止めが、全額自己負担(あるいは薬局で自分で買う)ことになるかもしれません。「リウマチの治療そのもの」に使う特殊な薬(生物学的製剤など)は対象外となる見込みですが、日々のセルフケアに関わるお薬代に影響が出る可能性があるため、今後の動向に注目が必要です。

院長からのアドバイス:薬を「選ぶ」時代へ

一昔前までは、リウマチの薬は「これしかない」という状況でした。しかし今は、「あなたのライフスタイルに合わせて選ぶ」時代です。

🗓️

「仕事が忙しいから、月に1回の通院で済ませたい」

👛

「家計を圧迫したくないから、バイオシミラーがいい」

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「注射は怖いから、最新の飲み薬を試したい」

どんな些細な希望でも構いません。私たち専門医は、医学的なデータ(エビデンス)と、あなたの「こう生きたい」という希望をすり合わせるために存在しています。

お薬の名前を全部覚える必要はありません。「あの、ブログで見た『BS』って私にも使えますか?」といった一言から、新しい治療の扉が開くこともあります。

あなたの関節と、そして未来を守るために。一緒に最適なパートナー(お薬)を見つけていきましょう!

当院での関節リウマチ診断・治療のご相談はこちらから承っております。

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