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関節リウマチ 治療の流れから具体的な治療費などを解説

今回は関節リウマチで内服薬、注射薬など治療薬の使い方の流れについてお話をしようと思います。
まず、内服薬からです。

内服薬メソトレキサートを中心に)


内服薬はいろいろありますが、メソトレキサートが関節リウマチでは中心的な治療内服薬です。
商品名はリウマトレックスです。
そして効果が高いです。

リウマチ友の会のアンケートによると


・65%のリウマチ患者さんがメソトレキサートを内服し
・68%の方が効果あり、
・27%の方が副作用が強い、
・50%の方が満足している、

と回答しています。

メソトレキサートは免疫を調整する薬なので
開始する前に感染症の検査をしっかりしておく必要があります。


 肝炎、肺炎、カビ(真菌)、結核、等の検査は必須です。
 また、毎回の血液検査で肝機能、貧血、白血球などの数値を確認するように
 厚労省から指摘があります。そんな薬ですが、良く効きます。

メソトレキサートに関しては
 リウマチ学会「メソトレキサートを服用する患者さんへ」を参考にしてください。

メソトレキサートの効きが悪くなった、
高齢になってきたため腎機能が低下し副作用が出やすくなった、

そんな時のために

次の治療オプションを考えておいた方が良い場合があります。


医師:
「メソトレキサートの効きが悪くなったり、腎機能が悪くなった際の次の選択肢を考えておきましょう。」

患者さん:
「今の薬ではだめでしょうか?」

医師:
「今は大丈夫ですが、高齢になると腎機能低下に伴いメソトレキサートの副作用が強く出る可能性が高くなります。」

患者さん:
「どんな副作用でしょうか?」

医師:
「はい、肺が硬くなるような肺炎を起こしたり、リンパ節が腫れてしまうようなリンパ腫を起こすこともあります。そのようなことにならないように、症状が安定している時に薬の減量を考えておきましょう。」

リンパ腫:
内服中止で65%の方が良くなります。 35%の方は化学療法が必要になります。
一方で関節リウマチ自体でもリンパ腫を発症するリスクが6.1%あります。

 

患者さん:
「次の薬はどんな薬になるのでしょうか?」

医師:
「メソトレキサートよりも副作用が少なく、同等かそれ以上の効き目のある注射薬が良いと思います。関節破壊の修復も期待されます。」

注射薬(生物学的製剤)

注射薬である生物学的製剤に関して
リウマチ友の会アンケートでは

・89%の方が効果あり、
・15%の方が副作用が強い、
・74%の方が満足している、
・約50%の方は完全寛解(痛みをほとんど忘れる状態)

となっています。

一方で生物学的製剤の難点は、自分で注射をしなくてはならないことと、コストがかかることです。

コストは、加入している保険組合によって差がありますが、
大体4万円/月です。

関節リウマチの薬は日進月歩です。
効果の高い新しい薬が出てくるのは有難い話ですが、コストが嵩むということは決して有難い話ではありません。

高額療養費制度というものがありますが、それでも月の負担は大きいです。
(こちらを参照)

バイオシミラーと言う先発薬と同等の効果を持つ薬価の低い薬も出てきています。
主治医と相談をしてみて下さい。
(エンブレルのバイオシミラー:エタネルセプトBS)
(ヒュミラのバイオシミラー:アダリムマブBS)

病気を治していくということはとても大切なことですが、薬代ということも重要な問題と思っています。

上田診療所ではそのようなことも含めて診療をして行きたいと思っています。

下の図は生物学的製剤の月に自己負担額になります。

アクテムラ(トシリズマブ) 2週に1回
エンブレル(エタネルセプト) 週1回
シンポニー(ゴリムマブ) 4週に1回
シムジア(セルトリズマブ) 2週に1回、(開始時は初回、2週間後、4週後、)
              安定すれば倍量投与で4週間間隔
オレンシア(アバタセプト) 週1回

等があります。

それぞれ作用が異なり

・TNFα阻害薬
 (エンブレル、エタネルセプト、ヒュミラ、アダリムマブ、シンポニー等)
・IL-6受容体阻害薬(アクテムラ)
・T細胞選択的共刺激調節剤(CTLA4)(オレンシア)

に分類されます。

使う順番は上記の通りが多いようです。

勿論他の順番が悪いということはありません。

内服の強い薬も出てきました。

JAK阻害薬 という薬です。

5種類あります。それぞれ若干性質が異なります。

効果は強く、生物学的製剤と同等かそれ以上と言われています。

JAK阻害薬は帯状疱疹の発生および長期安全性が十分確立されていない点が指摘されており
また、コスト的には生物学的製剤と比較すると高価です。

現在5%の方が使っているようです。その中で効果を実感しているのはその中の50%くらいです。(リウマチ友の会アンケート)

患者さん:
「もう少し様子を見たいのですが、早めに次の治療に移った方がよいのですか?」

医師:
「症状が進んだ状態まで治療開始を遅らせると、治療抵抗性になることが知られています。
早めに治療を開始していれば効いたはずの薬が、あとから使い始めると効かない身体になってしまうということが分かってきています。」

早めにしっかりとメソトレキサートなどで治療を始め、治療の有効性を把握して、必要であれば生物学的製剤への変更を素早く判断し、病勢を抑え込む。病勢が落ち着いてきたら薬の量を減らすべく試していく、というのが原則になります。

高額な薬剤の医療経済的な考え方(費用対効果)

もう少しコストの面を見てみましょう。

リウマチの治療は日々進歩していますが、治療費も増加傾向にあります。これは患者さんの負担額が大きくなっているということです。

生物学的製剤(bDMARD)の自己負担額(3割負担)は多くの製剤で1か月あたり
 30,000~40,000円とかなり高額です。

JAK阻害薬(tsDMARD)の自己負担額(3割負担)は1か月あたり
 42,000~45,000円と更に高額です。

そこで
生物学的製剤を使用した時としない時の経済効果を考えた先生がいます。(費用対効果)
・使用した時の(労働収入ー薬代)、
・使用しない時の(労働収入)
はどちらが大きいか、という命題です。

「関節リウマチにおいて生物学的製剤またはJAK阻害薬を使用する場合は、使用しない場合と比べ労働生産性を改善させるか?」

です。

2008年から2020年までの世界中の文献で検討をしたところ
「すべての報告において、生物学的製剤またはJAK阻害薬の使用による関節リウマチ患者の就労状況や労働生産性の改善効果が認められた」
というものでした。

つまり、リウマチの症状が悪化するのを放置するよりも、生物学的製剤等を使用してしっかり働けるようにした方が経済的に有利だ、という結果です。

しかし、リウマチ治療が早期に適切に開始されることにより、関節破壊が抑制され関節手術の必要がなくなり、就労が可能になり、介護を受ける必要もなくなり、寝たきりになることも無くなるのであれば将来的な医療費は少なくなる可能性の方が大きくなるはずです。

リウマチ治療費の負の側面と正の側面の両方を見ながら治療を進めて行きましょう。

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