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乾癬と関節痛

乾癬と関節痛は密接な関係があることをご存知でしょうか?

感染性関節炎


皮膚が赤く腫れあがり(紅斑)、フケのようにボロボロ落ちてくる病変(鱗屑)で頭髪の生え際や肘、膝に出やすい傾向がある病気です。

特に痒みは50%くらいの方に出ることが多いです。このような乾癬がある方に関節が痛くなる場合があります。乾癬の方の15%前後の方に起こると言われています。

乾癬は感染しません。(日本皮膚科学会 乾癬)今回は乾癬性関節炎(PsA)の方の話をご紹介します。

40代後半の男性


10年くらい前から皮膚に赤くはれてボロボロとフケが落ちてくるような現象が出てきていた40代後半の男性です。この方のお父様も同じような皮膚症状があったとのことです。(乾癬は遺伝します)

鱗屑(フケのようなもの)が付着した皮疹(紅斑)が、おでことお腹と背中、下肢全体にみられ当院皮膚科にて乾癬と診断されました。

3年くらい前から手の関節の痛みが出てきています。年に1回くらい指の関節が腫れたり痛みを伴ったりしています。3か月くらい前から3か月前から左手中指の第2関節が痛みを伴い腫れてきて、3週間前から左薬指全体が同様の症状になり悪化してきたので当院皮膚科からリウマチ科受診となりました。

左手の中指と薬指はソーセージのように腫れていて見るからに痛そうです。関節痛に関して当院リウマチ科が担当しました。

指の関節が痛い、腫れている


手の指の関節が痛いということであれば、まず関節リウマチ、膠原病、甲状腺疾患、などを考えていかなくてはなりません。そのためのレントゲン、血液検査、関節エコーなどを行います。

その結果、レントゲンでは関節の破壊や関節裂隙が狭くなるなどの関節リウマチの所見は認められず、また骨棘形成などの変形性関節炎なども含めた骨の変化の所見も認められませんでした。

血液検査にてもリウマチ反応は陰性で膠原病で陽性になる抗核抗体は陰性でした。炎症反応のCRPは強陽性です。この方の指はパンパンに腫れています。

典型的な乾癬性関節炎(PsA)と診断されました。特徴的なのは指の炎症です。指がパンパンに腫れているのです。まだ、骨の変化は出ていない状態です。

乾癬性関節炎に関して少しお話をしましょう。日本では珍しい病気と言われていましたが、最近徐々に増えてきています。食生活の欧米化でしょうか?遺伝要素が非常の大きく診断基準の中にも家族に乾癬の方がいるかどうかが重要なポイントになっています。

少しこの病気 乾癬性関節炎(PsA)についてお話をしましょう。

どれくらいの確率でこの病気(乾癬性関節炎)になるの?

PsAの発症頻度



乾癬性関節炎は、皮膚乾癬患者さんの15%程度に発症すると言われています。では乾癬患者さんはどれくらいいるのでしょうか? 

日本の人口の0.3%前後です。そうなると乾癬性関節炎の患者さんは日本人口の0.045%です。
1000人中0.45人が罹患するという事です。

海外に比べると日本では稀な疾患と認識されていましたが、食の欧米化が進み日本でも患者さんが徐々に増えてきています。

男女比は1:3です。後発年齢は40-50歳代です。

遺伝的要因があるの?

遺伝的および環境的要因


遺伝的要素は強く関わっていると言われています。一卵性双生児において乾癬性関節炎を起こす確率は80~100%という報告があります。HLA-B27 という遺伝子が関連が深いことがわかっています。

遺伝要素だけではなく環境因子も多いに関連があります。皮膚乾癬患者さんが骨は関節の外傷を負うと乾癬性関節炎になりやすいと言われています。

そもそもどんな病気なのでしょうか?

乾癬性関節炎(PsA)とは


乾癬性関節炎(PsA)は筋肉と骨の結合部(腱付着部)の炎症が引き起こす病気です。一番分かりやすい腱付着部はアキレス腱です。

この病気を疑ったらまずアキレス腱が腫れていないかを見ることが重要です。

同じように指の筋肉の腱付着部に炎症があると指がソーセージのようにパンパンに腫れてきます。これを指趾炎といいます。

今回の患者さんはこの指趾炎で指が非常に腫れていました。

乾癬性関節炎(PsA)は脊椎関節炎(SpA)というグループの中の1つの疾患です。似たような名前で混乱しやすいです。

脊椎関節炎(SpA)は脊椎や仙腸関節といった身体の中心の関節に炎症が及ぶ体軸性脊椎関節炎と、末梢の関節や腱付着部、眼のブドウ膜、腸などに炎症が及ぶ末梢性脊椎関節炎に分けられます。

乾癬性関節炎(PsA)は後者の末梢性脊椎関節炎に分類されます。

PsAの典型的な症状は(臨床症状と診断)


乾癬性関節炎で良く見られる症状は

・末梢関節炎
・体軸性病変
・腱付着部炎
・指趾炎
・皮膚乾癬
・爪病変

などです。

関節炎は第1関節(遠位指節間関節=DIP関節)の炎症が特徴的ですが、その他の関節にも起こることがあります。


体軸性病変は、頚椎に多く見られます。強直性脊椎炎(乾癬性関節炎の類縁疾患)では仙腸関節炎をおこすことが多いです。


腱付着部炎はアキレス腱、足底筋腱、骨盤の腱付着部などに見られます。乾癬性関節炎の関節炎や関節周囲の症状は腱付着部炎から波及すると考えられていて、付着部炎がこの病気の本質的な病態と考えられています。


指趾炎は指趾がソーセージのように腫れあがり、腱付着部炎から関節や腱鞘に炎症が波及したものと考えられています。初発症状となることが少なくありません。


皮膚乾癬は慢性炎症性角化症に分類されています。銀白色で厚い鱗屑(フケのようなもの)が付着した紅斑が出現します。これは機械的刺激を受ける部位にできやすいです。肘頭部、膝、髪の生え際、腰臀部が好発部位です。


爪乾癬では、爪の表面に点状の凹みや爪甲剥離が多く見られます。爪が混濁したり脆くなったりする場合もあります。

CASPAR分類基準(PsAの診断)


診断の際によく使われる分類基準として 「CASPAR分類基準」が使われます。

炎症性の関節病変(関節、脊椎、もしくは付着部)を有し、以下の5つの項目で3点以上を満たすもの

1、最近の乾癬の存在(2点)、乾癬の既往(1点)、乾癬の家族歴(1点)
2、最近の診察における陥凹、爪甲剥離症、角質肥厚などの典型的な爪の変形(1点)
3、リウマトイド因子陰性(1点)
4、最近の指趾炎(指趾全体の腫脹)、もしくはリウマチ医により記載された過去の指趾炎(1点)
5、手や足のX線における関節近傍の骨新生(1点)

PsAの病態


では身体の中でどんなことが起こって症状をひきおこしているのでしょうか?

PsAでは物理的刺激や感染をきっかけに免疫が活性化していろいろな病態を引き起こしているようです。

筋肉の付着部は腱や靭帯が骨に入り込んでいる部分があり、身体を動かす度に常に刺激をうけている場所です。PsAではこの物理的刺激に対する閾値が低くなり炎症を引き起こしやすくなっている可能性があります。

その結果、炎症性サイトカイン(炎症を引き起こす物質)が産生されて組織の障害をおこすのです。IL-23、TNF、IL-17などが代表的なものです。この中でもIL-22、IL-17は骨増殖性変化(骨を作る変化)を引き起こします。PsAでは骨が破壊される変化と骨が新しく作られる変化が同時におこっているのです。

治療はどうするの?


末梢性、体軸性の関節症状に対しては非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を第1選択薬として、効果不十分であれば、メソトレキサート(MTX)、サラゾスルファピリジン(SASP)などの抗リウマチ薬(DMARDs)が使われます。

これらでも効果不十分な場合は生物学的製剤が使われます。TNF阻害薬、IL-17 阻害薬、IL-23阻害薬が代表的な薬剤です。

「乾癬性関節炎(PsA)とは」のところで脊椎性関節炎というワードが出来てきましたが、そのお話を少ししたいと思います。

脊椎関節炎


脊椎関節炎とは脊椎に炎症が起こってくる病気の総称です。

その中でも体軸性脊椎関節炎と末梢性脊椎関節炎の2つのグループに分類されます。この2つのグループはオーバーラップ(重なる)する病態があるので完璧に区別することは難しいのですが、グループ分けすることによって病態を理解しやすくなります。

つまり、体軸性の症状がメインだけと末梢性の症状も少しある、またはその逆の状態もある、という場合があるという事です。

体軸性脊椎関節炎のメインな病気は、強直性脊椎炎で、脊椎や仙腸関節に炎症が起きて脊椎が硬くなってしまう病気です。

末梢性脊椎関節炎は、乾癬性関節炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患に伴う脊椎関節炎、がおもなものです。今回はこの中の乾癬性関節炎に関してのお話でした。

体軸性脊椎関節炎に関してはまた後日お話が出来ればと思います。

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