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HbA1c:9.5%から約9か月で薬が中止!

糖尿病のコントロールはHbA1cの推移をみていくことが一般的になっています。そんな中でもHbA1cが非常に高くなってからのコントロールは難しいです。今回はHbA1cが9.5%もあった方が、8か月で5.3%になり、内服中止まで持って行った例をご紹介します。

キーワードはCGM (持続グルコース モニタリング)


この方は上場企業で副社長をされていて、昨年4月に退職をされた60代後半の方です。昨年10月、口が渇く、尿が多い、身体がだるい、と訴えられ当院を受診されました。血液検査で血糖:350、HbA1c:11.5%、と非常に強い高血糖状態で明らかな糖尿病と診断されました。典型的な糖尿病の症状です。HbA1cが9.5%というととてもとても高い数字で、どの医者にかかってもすぐにインスリン療法を勧められる状態です。

当院でも直ちにインスリン療法を開始して血糖を下げていかないと、意識を失うような高血糖になる可能性をご説明しました。一時的な入院治療の選択肢の提案もさせて頂きました。しかし、「注射は希望しない、仕事を中断することはできないので入院もできない」、とお話があり困り果てたところでした。インスリンを使って血糖を下げないと非常に危険な状態であることを強く説明をさせて頂きインスリン療法を開始につなげたいと思ったのですが、ご本人はインスリン療法をご希望されません。

「食事を見直して何とか頑張りたい。」

血糖が異常に高い方で薬物治療を希望されない方の典型的なご発言です。ここまで血糖が上昇していると、高血糖が高血糖を呼び込む「糖毒性」という状態になっていて、食事を見直すのみでは改善しないことを説明し薬物治療の必要性をお話ししました。内服薬物療法を開始し1か月で改善傾向が無ければインスリン療法を開始する、ということで納得していただきました。

フリースタイルリブレ


インスリンの導入の話は断られてしまいましたが、その際にお話をした24時間血糖をモニターできるフリースタイルリブレに興味を持たれたようです。
自分のことは自分で管理して、自分の責任で対応していきたいという強い意志をお持ちの方です。自分の血糖を医療機関に行かなくても24時間モニターできるという武器を手に入れて、自分で管理していきたいとお話をされました。
フリースタイルリブレはインスリン治療を行っている方にのみ保険適応があることをおつたえしたところ自費で使わせてほしいというお話を頂きました。

フリースタイルリブレはスマートフォンがあれば特別な機器は要らず、24時間血糖をモニターできる機器です。上腕の外側に500円玉くらいのデバイスを貼り付けるだけで14日間の血糖をスマートフォンでモニターできます。内服薬はSGTL2阻害薬を開始することに決めて、フリースタイルリブレで血糖をご自分でモニターしながら食事を工夫していくということになりました。1か月である程度の改善が見られなければインスリン治療を開始するというお約束も頂きました。眼科にも受診していただき眼底出血などのリスクがないことを確認します。血糖を急激に下げると眼底出血などのリスクがあるので眼科受診は必須です。この時点での私の印象は、1か月後にインスリン導入となるだろう、というものでした。

その経過は?


11月1日に治療を開始して1か月が経過し、HbA1cを測定してみると 7.5%になっています!
SGLT2阻害薬のみで1か月間でこれほどの改善は経験がありません。私のインスリン導入の予定は嬉しい誤算となりました。いろいろとお話を聞くと、フリースタイルリブレで血糖がモニターできることで日々の生活をコントロールすることができて、モチベーションを維持できたとのことでした。「星を見ながらの航海はたやすいが、星が見れない曇り空では思った方向に航海ができないことと同じです。」というお話は印象的でした。

治療開始時の血糖の推移はこんな感じです。


SGLT2阻害薬を開始したとは言え、これほど急に血糖が改善されるとは驚きです。
御覧になって分かるように、この方は治療を開始した直後から夕食後の血糖が異常に高くなっているのは2週間で2日間のみです。(グラフで黄色の部分)

常に血糖をモニターできるという意味をこのとき強く感じました。その後のデータも以下のように安定してきて、血糖が180mg/dlを超えることが無くなりました。

ご本人にお話を聞くと、「家内と一緒に頑張っています。小麦はどれが吸収速度が遅いかを調べて、その小麦で2人でパンを作ったり、スイーツも研究して2人で作って美味しく食べています。食生活に関してはかなり研究をしています。その結果をフリースタイル・リブレで確認していますから、自分の行っていることが正しいかどうかがすぐ分かり助かっています。」ということでした。そこまでやれば、このデータも納得です。

HbA1cが低くなればそれでよいのか?


HbA1cは約2か月間の血糖の平均を見る検査です。これはHb(ヘモグロビン)が血液中に存在する時間(生きている時間)が約3か月間で、そのHb(ヘモグロビン)に血糖が付着することを利用した検査だからです。しかし、平均が改善されたという事だけで良いのでしょうか?経過中に高血糖や低血糖があっても、それが平均化されてしまうので実際の血糖の動きが分からない事になります。特に低血糖が問題です。低血糖を繰り返すと脳へのダメージが強くなると言われています。できる限り低血糖は避けたいところです。その点、CGMであれば低血糖の有無も確認できます。

この方はその後、1月下旬にはHbA1c : 6.4% に低下したと同時に、低血糖を起こす可能性を排除したいとご本人の希望もあり内服薬をDPP-4阻害薬に変更しました。4月には DPP-4阻害薬を半量にし、7月には内服薬中止となり、HbA1c : 5.3% で安定しています。この方には非常に強い意志力と前向きな姿勢を勉強させて頂きました。

他の方の血糖の推移を見てみましょう。


こちらの方は、インスリン導入をして間もない方です。血糖が高く、180以上の黄色の部分が多くなっています。このような方が一般的なパターンです。この方もインスリン導入後、血糖は改善してきています。

すべての方にCGMが必要という事ではありませんが、このように、自身で24時間の血糖をモニターできる時代になり、ますますご自身の病気に対する向き合い方が重要になってきています。

いろいろなデバイスが開発され治療の選択肢が多くなってきています。そのようなデバイスを使いながらでも一番大事なのはご自身の強い意志です。諦めない、その気持ちが数値の改善に向かうという事をご理解頂ければ嬉しいです。

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